現在、多汗症への外科的な治療は、その他の治療の効果に満足できない時だけに行われます。



まずどのような手術方法があり、どんな利点・欠点があるのか、一緒に見てみましょう。
手術療法は、1. ワキの手術 と 2. 主に手と顔の多汗症のための、交感神経節切断術 があります。

ただすべてのワキの手術がカバーされる訳でないので、クリニックで確認してくださいね。
胸腔鏡か交感神経節切断術は保険適応がありますが、実際にかかりたい病院が保険診療をしているかは、確認してくださいね。
ワキの手術法のいろいろ
剪除法
剪除法は、汗腺のある部位に、ワキの皺に沿って1−2本の5cmぐらいの長さの切開を入れ、皮膚を裏返して直視下に汗腺がある層を切除していく方法です。
剪除法は、経験のある医師が手術を行えば汗腺や毛根をかなりの割合で切除できます。
切除後は、通常はタイオーバーと言って、手術を受けた部分に血がたまらないように圧迫をかけて、腕の上げ下げが制限されます。

剪除法の特徴
- 傷が大きい (5 cm程度の傷が1−2本)
- 手術時間 片方約60−90分
- 手術後、入院がすすめられるクリニックもあり
- 腕が挙げられない期間 1-2週間
- 費用 両方で3万円程度(保険適応あり - クリニックで確認必要)
(管理人はこの剪除法を受けました。その頃は他の方法 - イオントフォレーシスや塩化アルミニウム入りの市販の制汗剤 - がなかったので、切羽詰まった結果です。
とにかくワキの汗が止まって欲しかったので、その意味ではとても利きました。ただ手術の跡がわかるので、結局その後ノースリーブの服などは着ません。)
クワドラカット
クワドラカットは剪除法に比べかなり小さい、4mmぐらいの皮膚切開の傷になります。
切開した穴から高速回転式の刃がついたカニューレを差し込み、皮下の汗腺の層を切除しながら吸引します。刃の先は、皮膚を傷つけないようになっています。
直視下で切除する剪除法に比べ、手術時間は短いです。
クワドラカットは完全に毛根が取られないので、ワキの毛を残しておきたい男性にも向いています。
また多汗症やワキガに悩むお子さん向けにも、施術されています。
クワドロカットの特徴
- 傷が小さい(4-5 mmの傷が1 -2本)
- 手術時間 両ワキ 約40-50分
- 手術後、すぐ帰宅可能
- 腕が挙げられない期間 1-2週間
- 費用 両方で40万円程度(保険適応なし)
- 子供でも可能
ローラーシェービング法(イナバ式皮下組織削除法)
回転式のローラーとカミソリの刃がついた専用器具を使って、汗腺を含めた皮下の組織を削除します。
切開した傷は1cm程度と小さくてすみます。
この方法では、ワキの皮膚の下1mm程度まで削るので、効果が高いです。
ただ直視下で汗腺を切除する訳ではないので、剪除法ほど汗腺を完全に取り去ることは一般にはできません。
ローラーシェービング法(イナバ式)の特徴
- 傷が小さい(2 cmの傷が1本)
- 手術時間 両ワキ 約60分
- 手術後、すぐ帰宅可能
- 腕が挙げられない期間 1-2週間
- 費用 両方で30万円程度(保険適応なし)
吸引法
脂肪吸引と同じ方法で、皮下の組織を吸い取ります。
不確実で、再発が多いので最近はあまり行われていないようです。
その他の手術
その他にもマイクロレーザー法など術式があるようですが、主流ではありません。
手、顔の多汗症のための手術
胸腔鏡下交感神経節切断術
交感神経節切断術という胸腔鏡下の手術もあります。
この治療法は、皮膚科のガイドラインでは、ワキの多汗症に関しては、『重症で他の治療法が効かなかったケースにつき、患者が強く希望した際にこの治療を考慮する』と言う旨が記載されています。術後の問題として、代償性発汗がひどいケースがあるためです。
私は片側しか神経節の切除をされなかったためか、代償性発汗は感じませんでしたが、顔汗への効果もイマイチだった記憶があります。(ただ現在は緊張しても顔汗はほとんど出ませんが、左右差はないので、多分手術をやった甲斐はあまりなかったのだろうなと思います。)
交感神経節切断術は、術後の合併症・副作用が起こった場合、長期にわたって更に別の問題で悩むことになりえません。
手汗に関しては、手を手術することは現在のところできません。
多分ここまでいらっしゃった方は、すでにいろいろ試されたことと思いますが、もしも以下のものを試していなかったら、まずこれらを試してほしいなと思います。
塩化アルミニウム入り制汗剤の効果や副作用は?汗を抑える機序やおすすめ商品も紹介します。
イオントフォレーシスは多汗症に効果あり?ドライオニック、ダーマドライ、サーリオ等家庭用機器も紹介
ボトックスで汗を止める!多汗症へのボトックスの効果機序、治療の間隔、費用は?おすすめクリニックも紹介してます。
多汗症のための手術を行っている主なクリニック
多汗症(ワキガを含め)のための手術をしているクリニックは、幾つかあります。

(このクリニックの部分は徐々に、クリニックの数や情報量を増やしていく予定です。)
池袋サンシャイン美容外科
池袋サンシャイン美容外科の特徴
- ワキの手術には保険適応 - 片ワキ 約2万円
- カウンセリングの当日に、日帰りで手術可能
池袋サンシャイン美容外科は、保険適応でワキの手術をします。
カウンセリングの当日に、日帰りで両脇の処置が可能なので、
遠隔地から来る方にはとてもありがたいですね。
他の多くのクリニックは、保険適応になりうるワキの手術も自由診療でやっています。
それを考えると、保険診療で手術費が抑えられる池袋サンシャイン美容外科は、経済的に余裕がない方にはありがたいですね。
両ワキとも手術をしても、約4万円です。
ジョウクリニック
ジョウクリニックの特徴
- 手術はマイクロシェーバー法 (35万円)、ハイブリッドマイクロシェーバー法 (45万円)
- ボトックス、ミラドライ、ビューホットも他の選択肢として可能
ジョウクリニックは関西から沖縄にかけてクリニックがある美容整形クリニックです。
ワキの処置もマイクロシェーバー法、ボトックス、ビューホット、ミラドライなどいろいろな選択肢があります。
ガーデンクリニック
ガーデンクリニックの特徴
- ダブルトリートメント法 (40万円) と、コンプリートトリートメント法 (70万円) の手術を施行
- 他にもビューホットやボトックス注射が選択肢としてあり
ガーデンクリニックでの多汗症の手術には
ダブルトリートメント法とコンプリートトリートメント法があります。
ダブルトリートメント法
ダブルトリートメント法では、ワキの皮膚に小さな穴を開け、エクリン腺とアポクリン腺を吸引して、除去します。
すべての汗腺を除去することは可能ではないようで、公式サイトでも『中等度の症状の方におすすめ』となっています。
手術費は 400,000円となっています。
コンプリートトリートメント法
これは、医師が直視下でエクリン腺とアポクリン腺を切除するもの。
ワキの切開傷は3-4センチとダブルトリートメント法よりも大きいですが、
汗腺の除去はかなり確実です。
手術自体は1時間程度で、日帰りが可能です。
これは手術費が 700,000円です。
ABCクリニック
ABCクリニックの特徴
- 男性専門のクリニック
- 手術は組織削除法のみ
- ボトックスも可能
男性なら、ABCクリニックが行きやすいかもしれません。
多汗症以外の男性の悩みで有名なABCクリニックですが、組織削除法とボトックスの注射を行っています。
ここの組織削除法は『ローラーを使った方法』ということです。
稲葉式ということかな。
保険診療ではないです。
公式ウェブサイト上には、ワキの手術費用は掲載してありませんでした。
湘南美容クリニック
湘南美容クリニックの特徴
- 年間 20,000以上の症例
- シェービング法、根こそぎベイザーシェービング法と完全摘出法(反転剪除法)が手術選択肢
- 他にもミラドライ、ボトックスによる治療が可能
完全摘出法は、ウェブサイト上の記載を見ると剪除法のようです。
これは両ワキで 153,090円。
シェービング法は効果が、その他の方法ほど高くないですが、術後の腫れなどは最も少ないです。こちらも両ワキで 153,090円。
根こそぎベイザーシェービング法は、1cm程度の傷からベイザーと呼ばれる、超音波振動を出す機器を挿入。
アポクリン汗腺にベイザー波を直接照射し熱でダメージを与え、さらに溶けたアポクリン汗腺をストライカー社のシェービング機もしくはベイザー吸引管で体外へ吸い出します。
効果は完全摘出法と同程度で、傷は小さく、肌への負担や術後の腫れが少ないという利点があります。
ただ費用は 384.340円と少し高くなります。
聖心美容クリニック
聖心美容クリニックの特徴
- マイクロリムーブ法 (35万円 )と反転剪除法 (片方24万円、両ワキ40万円)が手術選択肢
- その他にもミラドライ、サーミドライ(横浜と大阪のみ)、ボトックスの選択肢があり
東京美容外科
東京美容外科の特徴
- 反転剪除法 (45万円) とローラー吸引法(15万円)が選択肢
- 他院での手術後の再発にも対応(追加料金必要)
- ボトックス、ミラドライも可能
東京美容外科で行っている手術は反転剪除法とローラー吸引。
他院での手術後に修正手術も行っています。
通常の価格に20万円追加の治療費がかかります。