



ということで、今回は、
- イオントフォレーシスがどのように働くのか、
- どのような利点と欠点があるか、
- どのような家庭用の機器が日本で(または海外から)入手可能か、
- このクリニックでイオントフォレーシスの治療が受けられるか
を説明します。
(情報の多くはInternational hydrohidrous society(国際多汗症協会)のウェブサイトとニュージーランドの皮膚科のウェブサイトであるDermnetのサイトを参照しています。)
イオントフォレーシスとは?
イオントフォレーシスは簡単に言うと、電気を液体の中に通して、その液体に漬けた皮膚の通常のバリアーをイオン化した粒子が通るようにする療法です。
安全な治療法であり、通常は2週間ぐらいで効果が感じられます。
イオントフォレーシスの歴史
なんと18世紀から、イオントフォレーシスが疾患の治療に試されていたようです。その時は電流を通すことによって皮膚から体の中に薬を入り込ませることが目的でした。
汗腺がある部分が最も電気抵抗が低いので、薬はこの汗腺を入り口として主に吸収されるようです。
1936年に日本人の市川さんが薬をイオントフォレーシスをすることで、汗が少なくなることを発見。その後、水道水のイオントフォレーシスで、汗が出なくなることがわかり、1968年にイオントフォレーシスの器械が作られたことから、もっと世に知られるようになってきました。

なんか、イオントフォレーシス試してみたくなったな
イオントフォレーシスの仕組み
イオントフォレーシスの多汗症に対する作用メカニズムは、実際ははっきりとはわかっていないようです。
幾つかの説があり、その一つが「イオンチャンネルのブロック」です。
イオントフォレーシスの機器によって水道水が電気分解され、水素イオンが作られます。
これが汗腺の分泌部にある汗腺細胞のイオンチャンネルをブロックし、その結果汗の生成が抑制されます。
ただ、
- 電流によって、正常な交感神経の伝達が障害される、とか
- イオンが汗腺の導管を塞ぐ
という説もあります。
実際にイオントフォレーシス後の汗腺を調べても、汗腺が閉塞していないことが明らかになっており、現時点では、このイオンチャンネルのブロックによる汗腺機能の抑制、という説が正しそうだということになっています。
イオントフォレーシスを使えない人は?

- 心臓のペースメーカーや除細動の器械が体に入っている人
- 心疾患がある人やあるかもしれない人
- 妊娠中の人
- 金属製の子宮内避妊具が入っている人
- 癲癇の既往がある人
- 金属でできたインプラントが入っている人
- 治療したい部位に感覚障害や痺れがある人
- 治療したい部分に癌がある人
- 皮膚に感染や炎症がある人
- 重篤な血管障害がある人
このような人は、イオントフォレーシスを安全に使えない可能性が高いです。
一度かかりつけの医師に相談してくださいね。
イオントフォレーシスの欠点
皮膚のピリピリ感
電流を使っているために、治療をする時に、ピリピリとした不快感が皮膚に感じられることがあります。
電流の強さにもよるので、あまりに不快感が強ければ電流の量を減らすことも可能です。
治療を定期的に繰り返す必要
治療の間隔は、その人の多汗症の程度にもよります。
毎日から始め、徐々に間隔を開けて、1週間に1回程度で維持することができます。
ただ永久に効く治療ではないので、完全に治療を止めてしまうと、汗も戻ってきてしまいます。

家庭で使用できるイオントフォレーシスの機器
家庭でイオントフォレーシスをする時は、一回の治療時間がクリニックよりも長く、15-30分ほどはかかります。
頻度としては、クリニックでの治療と同じく、最初は頻回に1週間に2回ほど行い、2−3週間して効果が感じられた頃に、徐々に治療の頻度を落とします。
長い間治療を止めてしまうと、汗が再開しますので、続けて治療が必要です。

DermaDry ダーマドライ
DermaDry ダーマドライは自宅で水道水を使ってできるイオントフォレーシスの機器で、カナダの会社が販売しています。
以前は日本のアマゾンから購入できたのですが、ここからの販売は終了したそうです。
一番のおすすめはカナダのDermaDryの公式ウェブサイトから購入すること。
国際送料無料で送ってくれます。パーツだけ買うときも、国際送料無料です。





DermaDryのセットには3つあります。
Total (手足ワキ用) | Hands & Feet (手足用) | Underarms (ワキ用) |
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38,557円* | 37,453円* | 36,348円* |
*日本円での値段は、為替レートの変化により変化するようです。実際に公式サイトを見られたタイミングで、日本円での値段は少し上のものとは異なります。
使い方は簡単です。公式サイトからの動画を見てみてください。
これは、手足の多汗症の治療方法です。
これはワキの下用。
DermaDryはAC アダブターが付いていて、日本でもコンセントにコードを差し込めばすぐ使えます。日本の国のコンセントに合うようなアダプターもついています。
これは電池がいらないので(ただしコンセントにつなげる場所でしか使えない。まあほとんどの場所はコンセントが近くにありますよね。)電池を買い替える必要がないのは、嬉しいですね。
ただパッドなどは買い替えが必要です。

実際にダーマドライを購入した記録と口コミに興味がある方はこちらへ
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ダーマドライDermaDryをワキの多汗症に使ったレビュー。口コミもあります。
サーリオ Saalio
これも、日本から日本語のサイトで購入できる家庭用イオントフォレーシスの器械です。
スイスの会社が販売しています。
サーリオの特徴をまとめると
- 顔用のパッドがある
- 直流電流とパルス電流が選べる
- 値段がかなり高い
顔用のパッド
顔の汗は特に他の人からすぐわかり、それを感じて緊張すると余計に汗が出るという悪循環になり、「何とか治療したい」と思っている方は多いはず。
イオントフォレーシスで治療できるということは、一つ治療の選択肢が増えたという意味でとてもありがたいです。
顔のパッドは、歯の治療で金属の詰め物が入っている人は使えません
(他の部位でも、基本的に金属が体に入っている人は使えませんが)。
サーリオは、手足用のマットが本体とともに購入できるようになっていますが
ワキ用のパッドも別途購入できます。
直流とパルス電流の選択可
直流電流の方が効果は高いので、手足の多汗症の程度がひどい方にはオススメです。
ただ効果が高いだけ、皮膚の炎症は起きやすいので
低い電流から徐々に上げていってくださいね。
今まで、他のイオントフォレーシスの器械で効果がイマイチだった方は
直流電流での治療ができるサーリオは試してみる価値ありです。
値段
サーリオの値段は
手足が治療できるセットが 89,800円
ワキ治療用の付属品が 6,800円
顔の治療用付属品が 16,900円
これに加え、日本の税関で 3,500円から 5,000円程度の関税を払う必要があります。
ダーマドライに比べると高いですね。
でも
直流とパルス電流を選んで治療できる
ということと
顔の治療も可能である
を考えると、多汗症のひどい方や、顔の治療もしたい方は
サーリオを1番に選択しても良いかなと思います。
Drionic ドライオニック
Drionic ドライオニックも、自宅で水道水を使ってできるイオントフォレーシスの器械です。
この機器は日本の皮膚科学会の多汗症のガイドラインにも載っています。この会社はこの手の機器を販売している会社として、歴史が長いからなのでしょう。
この器械はバッテリーによって働きます。コンセントをつなげるタイプではありません直流を使っています。
電流のことに関してはInternation Hyeperhydrosis Societyのウェブサイトによると
Study with gravimetric follow-up
To investigate whether a current other than the standard direct current (DC) would lessen side effects of iontophoresis, 25 patients with palmar hyperhidrosis were treated in a double-blind manner with standard DC, alternating current (AC), or an alternating current with a DC offset (AC/DC).[110] Patients were treated 4 times a week until resolution, and then once weekly as maintenance. Gravimetric measurement of sweat production was performed. Those treated with standard DC had improvement in hyperhidrosis after an average of 11 treatments, as well as the usual side effects, including the occasional mild shock due to incorrect technique (i.e. moving hands in or out of the water bath too quickly). Those on AC treatments had no resolution of hyperhidrosis after a total of 25 treatments. Those on the AC/DC protocol improved at the same rate as those on DC, but there were no signs of skin irritation or discomfort. The authors concluded that the AC with a DC offset “should become the treatment of choice.”
要は直流 (DC)を使っている機器(ドライオニックなど)とAC/DCを使っている機器(ダーマドライなど)には効果の差はないが、副作用はAC/DCの機器の方が少なかった、ということ。
Drionicを購入する経路はアメリカのDrionicの会社からになります。
日本に輸入代行店があったのですが、アメリカのDrionicから値上げを要求されたりして、最近販売を中止したようです。
バッテリーは半年に一回、パッドは1年に一回程度買い替えが必要ですが、アメリカから直接購入すると割引をしてくれるとのことでした。(ただバッテリーは購入し続けないといけないのが、面倒なのと、結局高くつくのではないかと思います。)
アメリカから直輸入すると手足用$234、ワキ用$229でそれに$50の送料を加えると手足用31,154円、ワキ用30,602円となります。
さらに、日本に入る時に関税が取られる可能性があります。

クリニックでのイオントフォレーシス
医師のいるクリニックで行う時は、手と足に関しては多汗症の程度が重症とされれば、保険適応になるので、一度かかりつけの皮膚科医に相談してみるのが良いと思います。
脇に対しては保険は効きません。
1回の治療が15分ほどで、はじめは1週間に2−3回通うことになります。
調べた範囲では、クリニックで主に行っているのは手足なので、脇にイオントフォレーシスを試したい方は、自分で家庭用の機器を購入することになりますね。