
注意
実は”ボトックス”というのはアラガンとグラクソ・スミスクラインのA型ボツリヌストキシン製剤の商標なのです。
ただ一般に”ボトックス”というと、”ボツリヌストキシン製剤”そのものを意味するほど、この名前が知られているので、このウェブサイト上では他の会社のボツリヌストキシン製剤も含め、”ボトックス”と呼ぶことがあるので、ご了承ください。
ボトックスの作用機序
ボトックスの注射は、ボツリヌス菌Clostridium botulinumにより産生されるA型ボツリヌス毒素が、神経の末端に働くと、その末端からアセチルコリンが放出されるのをブロックするという機序を用いて、いろいろな病態に使われています。


汗を抑える効果が感じられるようになるまでには、2−3日はかかります。十分な効果を得るには1週間以上かかります。
ボトックスの効果が、永久に続かない訳
ボトックスの注射で影響を受けた神経末端は、機能しないままなのですが、神経から別の枝が出てきて新しい神経末端となり働くので、また発汗が始まってしまうということらしいです。
汗を抑える効果は、大体4ヶ月から9ヶ月くらい持続します。


保険適応はワキのみで、診断基準を満たす必要あり
とてもよく効くボトックスだけれど、保険適応があるのは、ワキの多汗症の診断基準を満たし、重症な方に限られます。
ワキへの適応
原発性腋窩多汗症の診断基準は
原因不明の過剰なワキの汗が半年以上前から続いている方で、さらに、以下の6項目のうち2項目以上に当てはまる時に満たされます。
- 両ワキで同じくらい多くの汗をかく
- ワキの汗が多いため、日常生活に支障が生じている
- 週に1回以上、ワキに多くの汗をかくことがある
- このような症状は25歳以前にはじまった
- 同じような症状の家族・親戚がいる
- 眠っているときはワキの汗がひどくない
またHyperhidrosis Disease Severity Scale(HDSS)を用い、患者さんの自覚の程度により、症状の程度を判定します。
- 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
- 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
- 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
- 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
3か4であれば、重症と見なされ、保険適応の対象になります。

手足や顔、頭への適応
保険適応はありませんが、ボトックスの注射は、顔、頭皮や手足にも行うことができます。
ボツリヌストキシン製剤の種類
現在、世界中で使われているボツリヌストキシン製剤は、ずべて同じ会社からのものではありません。
日本で使われているだけでも、何種類かあり、それによって値段が使います。
基本的には先発品と呼ばれるものは値段が高く、パテントが切れてから他の会社が参入して作ったジェネリック薬品は値段が安いです。(ジェネリックだから質が悪いという訳ではありません。)
特に名の知られたクリニックは、信頼性のない物は使用していないと思いますが、注射を受ける前にどのボツリヌストキシン製剤を使っているか確認しておく良いと思います。
よく使われるボトックス製剤
ボトックス製剤 | 販売会社 | 承認機関* | 特徴 | 価格** |
ボトックスビスタ | アラガン・ジャパン | FDA、厚生労働省 | 温度管理次第で劣化 | 高 |
ボトックス A型ボツリヌス毒素製剤 | グラクソ・スミスクライン | FDA、厚生労働省 | 温度管理次第で劣化 | 高 |
ゼミオン | ドイツ メルツ | FDA | 常温保存可能 | 高 |
ディスポート | 英国 イプセン | FDA | 温度管理次第で劣化 | 高 |
ニューロノックス | 韓国 メディトックス | KFDA | 温度管理次第で劣化 | 安 |
リジェノックス | 韓国 ハンズバイオメド | KFDA | 温度管理次第で劣化 | 安 |
メディトキシン | 韓国 テピョンヤン | KFDA | 温度管理次第で劣化 | 安 |
*FDA - 米国食品医薬品局、KFDA - 韓国食品医薬品安全局
**価格は相対的なものです。前述の様に、値段と品質は必ずしも一致しません。
グラクソ・スミスクライン社の『ボトックス』は、アラガン社の許可を得て商標を使い製造しているので、基本的には『ボトックスビスタ』と『ボトックス』はほぼ同じものなのだと思います。
すべてのウェブサイトに情報が細かく記載していないので、明確ではないのですが、保険診療で使っているのは『ボトックスビスタ』か『ボトックス』の様です。そのため3割負担でも結構高くなります。
そこでクリニックでは韓国製のジェネリックを使って、保険診療ではないけれど保険診療より安く治療を行っているところもある様です。
避けたいボツリヌストキシン製剤
BTX-A | 中国 Lanzhou | FDAなどの認可なし | 豚のゼラチン使用? | 安全性に疑問 |
このウェブサイトに掲載しているクリニックが、安全性に疑問があるボツリヌストキシン製剤を使っている可能性はないと思います。
ただ、近所のあまり知られていないようなクリニックで、ボトックスの注射を受けるという時とかいう時には、どのボツリヌストキシン製剤を使っているか、確認してみてください。
その他の、ボツリヌストキシン製剤
『マイオブロック』というB型ボツリヌストキシン製剤。(上の表にあるボツリヌストキシン製剤はすべてA型です。)
日本では、A型ボツリヌストキシン製剤に対して抗体ができ、効果が出なくなった時に使用されることがあるようです。第一選択として日本で使われることはないと思います。
アメリカでは首の筋肉の重度の痙攣 - 痙性斜頸(ディストニア)の治療に主に使われています。
ボトックスビスタ(アラガン・ジャパンが販売)ー厚生労働省が承認。保存状況によって品質が劣化しやすく、効果が下がることもある。タンパク質などの不純物が圧倒的に少なく、抗体ができにくい為、繰り返し使っても効果が下がりにくい。FDA(アメリカの厚生労働省に当たる機関)認可あり
ボトックス A型ボツリヌス毒素製剤(グラクソ・スミスクライン)ー保険で使われるもの
ニューロノックス (韓国メディトックス社)ーニューロノックスは温度管理が重要です。
ゼミオン (ドイツ メルツ社)常温保存可能で、温度変化による変性がないため、安定した結果を得ることができます。ほかのすべてのボツリヌストキシン製剤と違って、常温保存が可能
ボトックス注射の費用
ボトックス注射の費用は、部位と保険適応の有無によって違ってきます。
またクリニックによっては異なる会社のボトックスを使っており、それによってもかなり費用が変わります。
ボトックスの注射が受けられるクリニック
ボトックスは、ワキに関しては多汗症で症状がひどければ保険適応が利きますので、お近くの皮膚科のクリニックや病院でも、施術しているところがあるかもしれません。
こちらにはインターネットで、ボトックス注射をしていることを紹介しているクリニックを紹介します。全国展開していて、交通の便があるところにあるクリニックが多いので、行きやすいと思います。
ワキの多汗症であっても、保険診療をしていないクリニックが多いので、その辺りは確認して納得してからボトックスの注射を受けてください。
ワキ以外の多汗症に対しては、どちらにしても保険が利かないので、経験の多いこのリストにあるクリニックはおすすめだと思います。
*ボトックス注射の値段は参照のために載せてあります。もちろん、値段と治療やサービスの質は直接関連がないので、ご自分に合ったクリニックを探してくださいね。
東京プラチナムクリニック
東京、渋谷にあるクリニックです。
ワキへのボトックス注射は88,000円(税抜)から、とのこと。
他の部位への注射をしているかどうかは、ウェブサイトには記載してありませんでした。
東京プラチナムクリニックはミラドライを推進しており、遠くから来院する人には交通費の補助をしています。モニターも募集しています。
ボトックスとミラドライを比較して、どちらが自分に合っているかカウンセリングをすると良いかもしれませんね。
ジョウクリニック
東京から那覇まで、日本全国で7院あります。
ボトックスの注射は
- 8x4cm 50,000円(税別)
- 広範囲 90,000円(税別)
- 手のひら・指 80,000円(税別)
となっています。
ジョウクリニックは、ボトックスの他にも様々な治療法を提供しているので、他の治療法について、実際に医師と相談するのもいいかもしれません。
横浜中央クリニック
横浜にクリニックが1院あります。
ボトックスは、
ワキガ/すそワキガが 50単位 45,000円(税抜)
2回目以降は 50単位 39,800円(税抜)
と、ウェブサイトにあります。
実際1回の治療に50単位使うのか、それ以上使うのはウェブサイトに記載はありませんでした。
(他のクリニックのウェブサイトには”片脇20-30単位”と書いてあったので、どの会社のボツリヌストキシンかによって異なるとは思いますが、多分50単位で両脇分なのでしょうか。
ただ他のクリニックのサイトには、両脇で軽症60単位、重症100単位とありましたので、詳細はクリニックに確認してください。)
横浜中央クリニックがおすすめなのは、MEDJET (メドジェット)という”ノンニードルボツリヌストキシン浸透注入法”を使うこと。
炭酸ガスの噴射による圧力で先端30ミクロン(0.03mm)の穴から薬剤を皮膚の中に散布するので、針を使った注入法と比べて痛みは70%軽減されるので麻酔が不要となります。
そのためお身体への負担が少なく、痛みに弱い方も、今までとは比べものにならないほど楽に治療を受けられるようになりました。
(横浜中央クリニックのウェブサイトより引用)
とあり、手や足の写真が載っているので、手足の多汗症も治療しているのだと思われます。
手足のボトックス治療を希望している方は、一度電話かメールで確認してから来院してくださいね。
その他にもビューホットやソノペットによる治療も行っています。
ガーデンクリニック
東京から福岡まで7院で展開。
ガーデンクリニックでは
REGENOXとAllerganのボツリヌストキシン製剤を使用。
ワキガ/ 多汗症のためのボトックスは
8 x 4 cm RENOGEX 40,000円
8 x 4 cm Allergan 70,000円
とのこと。
モニターとなると、割引価格でボトックスを受けられるようです。
ワキ以外の多汗症にボトックスを注射してくれるのかは、ウェブサイトからはわかりませんでした。
ガーデンクリニックでは、ボトックスの注射の他に
- ビューホット
- コンプリートトリートメント
- ダブルトリートメント
という治療法も用意しているので、最初のカウンセリング時にいろいろ相談してみるといいですね。
東京美容外科
東京美容外科は青山から長崎まで12院。
料金は以下のようになっています。(東京美容外科のウェブサイトから抜粋)
施術方法 | 単 位 | 料 金 |
---|---|---|
初回限定 | 1本 | 6,800円 |
リジェノックス | 1本 | 8,000円 |
両ワキ 保証付きプラン:年間4回まで | 150,000円 | |
アラガン | 1本 | 12,000円 |
両ワキ 保証付きプラン:年間4回まで | 180,000円 |
湘南美容クリニック
湘南美容クリニックは、札幌から那覇まで、なんと72院。
ほとんどの大きな街にはありそうです。
以下が料金表。湘南美容クリニックのウェブサイトから必要部分を抜粋しています。税込みです。
A型ボツリヌストキシン
両わき | ショート 60単位(U)(軽症多汗症向き) | 14,940円 |
トール 80単位(U) | 16,800円 | |
グランデ 100単位(U) (重症多汗症向き) | 24,900円 | |
手のひら | 1回 | 38,470円 |
頭皮汗止め | 76,950円 | |
足裏 | 59,800円 |
ボトックス(アラガン)
両わき | ショート 60単位(U) | 27,600円 |
トール 80単位(U) | 36,800円 | |
グランデ 100単位(U) | 46,000円 | |
手のひら | 1回 | 137,700円 |
頭皮汗止め | 275,400円 | |
背中汗止め | 背中上部 | 275,400円 |
背中全体 | 550,390円 | |
足裏 | 198,000円 |
湘南美容クリニックでも、ミラドライや手術など、幾つかの多汗症治療の選択肢があるので、一度医師と話し合うのもいいですね。
聖心美容クリニック
聖心クリニックは札幌から福岡まで9院と、上海にも1院あります。
(いろいろなクリニックのウェブサイトを見ていると、アジアの他の国でウェブサイトが見られるようになっていたり、アジアの国のクレジットカードが支払いに使えるようになっていたりします。
多分、外国からも、日本に治療しに来る人がたくさんいるのでしょうね。)
以下は料金表。ウェブサイトから抜粋してあります。
(使用ボツリヌストキシン製剤 ディスポート)
ワキ 手のひら 足の裏 |
1回 | 78,000円(税抜) |
追加注入付プラン (1ヶ月以内1回) |
118,000円(税抜) |
このクリニックも、他の多汗症治療オプションがあります。
