塩化アルミニウムは市販の制汗剤によく入っている成分です。多汗症で医師を受診して場合、よく処方されるものでもあります。
市販のものには、他にも収斂剤、静菌剤など含まれていますが、塩化アルミニウムは、日本をはじめ世界中で医療機関で使われているものです。
1970年代に、さらに制汗作用の優れた『塩化アルミニウム- ジルコニウム複合塩』がアメリカで開発されましたが、動物への長期にわたる吸入が肺の異常をもたらすという試験結果が出て、スプレー型の制汗剤への配合が禁止されました。
日本では、使用はされていません。
塩化アルミニウムの適応については、日本の皮膚科学外のガイドラインに記載がありますので、興味のある方はどうぞ。
-
-
多汗症治療ガイドラインと主な治療法- 日本
さて、今回は
塩化アルミニウムはどうやって汗を止められるの?
アルミニウムなんて、体に使って問題はないの?』
なんていう、皆さんの疑問にお答えします。
また、医者にかからずに手軽にオンラインで購入できる制汗剤を、アルミニウム入りのものを主に紹介していきます。
アルミニウム入り制汗剤はどのように汗を止めるか
普通の状態の皮膚は弱酸性に保たれています(pH4.5-6)。このpHは、細菌の繁殖を抑えることにも役立っています。
たくさん汗ができると何が起こるかというと、
汗の成分のうちのアルカリ性の強い重炭酸イオンの、エクリン腺の導管から再吸収が間に合わなくなり、皮膚の表面がアルカリ性に傾きます。

ところで、アルミニウム入りの制汗剤は、通常酸性です。
塩化アルミニウムは水(汗)と反応して、塩酸を作ります。
AlCl3 + 3H2O → Al(OH)3 + 3HCl


アルミニウムはpHが低い溶液(=酸性の液)の中では溶けていますが、pHが高くなるとアルミニウム塩(水酸化アルミニウム)として析出します。
アルミニウム入り制汗剤を皮膚に塗ると、アルミニウムが汗腺の導管の中で、より酸性の弱い汗と反応して、水酸化アルミニウムのジェル上の塊となり、管を塞いで汗が皮膚に出てくるのを抑えます。
通常は、表皮がどんどん新しく生まれ変わって、表面の皮膚が落ちていくターンオーバーにより、この制汗剤をつけていないと、また汗が皮膚表面に出始めます。
長期間使っていると、汗腺の分泌細胞を壊すようで、これがだんだん使用頻度を減らせる理由のようです。
他にも「アルミニウムイオンが汗腺細胞の細胞膜に働く」という説も目にしましたが、これを詳しく説明する資料は見つけられませんでした。
副作用
1. 皮膚の刺激症状
塩化アルミニウムは皮膚を刺激し、時に濃度の高いものではヒリヒリ感を感じる方もいます。
酸性度を抑えて、皮膚への刺激を少なくするために、部分中和した塩化アルミニウム水和物 - クロルヒドロキシアルミニウム - もよく使われています。

2. 毛嚢炎
アルミニウムが汗腺の管を塞ぐため、これがアポクリン腺のある毛穴を防ぐこともあります。
このため、毛嚢炎(=毛根のあたりの炎症)が起こることがあります。

3. アルツハイマー病や乳がんのリスク上昇?
一時期、アルミニウムがアルツハイマー病発症のリスクになるといわれて話題になったことがあります。一つの文献のリンクを示しておきます。
(多分これで、制酸剤として使われていたアルミニウムが、多くの胃薬から除かれたことと思います。)
実際は、確かな根拠となる研究結果は発表されていません。(実際の人間でアルミニウム摂取群とプラセボ群で何十年後にアルツハイマーになるかどうかというのを追跡する研究をするのは、そんなに簡単そうでないですよね。)

実はアルミニウムは地球上に非常に多くある元素で、ご存知のように調理器具にも使われています。
その他には、アルミニウム入り制汗剤が乳がん発症のリスクをあげるのではないか、と言うものです。
これに関して、幾つかの研究ではその関連が否定されているものの、カミソリで剃ったワキに、アルミニウム入りの制汗剤を頻回に長期間使っていた若い人が乳がんを発症した、と言う報告があります。
乳がんの発症には、他にもいろいろなものが関与しているので、制汗剤がどのくらい影響したかは不明だと思います。
4. 服を変色する
塩化アルミニウムが服につくと、その布によっては変色する危険があります。


変色を防ぐには、
まず、制汗剤を使用後、十分乾かしてから服をつけること。
必要ならドライヤーで乾かしてください。
また朝、ワキの表面の制汗剤をシャワーで落とした後、皮膚が乾いた後に服を着てください。。
もしも変色に気がついたら、すぐに服を洗うと、変色が目立たなくなるかもしれません。

アルミニウム入り制汗剤の使い方
できるだけ汗が出ていない状態の肌に使うことが勧められています。その後は十分乾かしてください。
理由は
- 少なくとも6−8時間は皮膚の上に制汗剤が付いていて、汗腺の管の中にアルミニウムイオンが入り込んで、それが汗で流し出されないようにするため
- 皮膚上に水があると、それと塩化アルミニウムが反応して塩酸を作り、余計に皮膚の刺激が強くなるため
です。
朝、シャワーでワキを洗い流してください。

オススメのアルミニウム入り制汗剤
多汗症で医者にかかっている方は、直接塩化アルミニウムの溶液が処方されていると思うので、ここでは医者にかからず、アルミニウム入制汗剤を入手したい方への情報を載せています。
濃度の高いものから紹介していますが、濃度が高ければ予想される効果は高いものの、副作用の可能性も高くなります。

結局は、いろいろ試してみて自分の肌に一番あって効果にも満足できるものを探すことになります。効果があっても、炎症を起こして続けられなかった本末転倒です。
また、長期に購入することを考えると、もちろんあまり価格の高いものはお勧めではないですが、これも最終滴には、自分が高いお金を払っても、商品の効果に満足していて、他のもっと価格が低いものでは満足できないということであれば、個人滴には有意義なお金の使い方だと思います。
えびす調剤薬局の塩化アルミニウム20%液

これを購入するときは、処方箋は要らないのですが、オンラインフォームで質問などに答え、その後また薬局へメールや電話で連絡するという手間があります。
基本的には、医師に処方された薬と同じで、あなたが使っても健康上問題がないことを確認し、あなたが使い方や副作用を理解したことを明らかにしてからしか、購入できないようになっています。
30mlのものが3本で 1500円+送料です。もっと少ない量を購入することもできます。
そんなにオンライン薬局とのやり取りは面倒なことではないので、値段からして、これから試してみたらどうかなと思います。
この液の中にはベンザルコニウム塩化物も入っています。これは消毒剤としても使われるもので、皮膚の細菌を殺す目的で入っているようです(多分溶液中で雑菌が繁殖しないような働きも考えられていると思いますが)。


デトランスα(Perspirex) (塩化アルミニウム20%)
これは、日本の医療機関で処方されるのと同程度の濃度の塩化アルミニウムが入っています。
デンマークから輸入されているとのこと(日本の医薬部外品では、13%が最高の濃度です)。オンラインでしか買えません。
標準仕様のデトランスは塩化アルミニウムが20%で、敏感肌用のものは10.27%。
その他の違いは、標準仕様のものには乳酸アルミニウム、プロピレングルコールなどが入っていますが、敏感肌用には乳酸カルシウム(アルミニウムではない)が入っていて、プロピレングルコールは入っていません。
こちらから購入すると、最初に標準のデトランス(20ml)に加え、敏感肌用のもの(5ml) が付いてきて試せるようになっています。
肌が敏感で20%が耐えられるかどうか心配、という人にはいいと思います。
値段は、1ヶ月目がモニター価格で999円、2ヶ月目が2900円(標準か敏感肌用かどちらか)、3ヶ月目からは、1ヶ月4320円。モニターになると、最初に4ヶ月分頼まないといけなくて、12539円/4ヶ月分前払いという感じですね。
このデトランスには、手足用のローション(ロールオンでないタイプ)と『ストロング』という塩化アルミニウム25%の商品もあります。

ドリクラー Driclor(アルミニウム クロロハイドレイト20%)
これもロールオン。イギリスからです。
アマゾンで買えます。20mlで1906円(送料無料)。

デオエースEXプラス
(クロルヒドロキシアルミニウム➖濃度の表示は見当たらず)
口コミを見ると、やはり高濃度の塩化アルミニウム入りのものほどは効かない、というのがよく見られましたが、肌には優しいよう。
40mlと携帯用5mlの2つで、お試し価格が2900円。2回目からは40mlが7800円です。
今なら、デトランスαとデオエースEXプラスがセットになった、格安お試しセットが出ています。

サーテンドライ CertainDri Prescription strength (塩化アルミニウム12%)
サーテンドライには幾つか種類があり、成分が少し異なります。
こちらの Prescription Strenth のものは塩化アルミニウム12%で、他のアルミニウム入り制汗剤と同じく、夜に使います。
サーテンドライ Everyday strength (アルミニウムジルコニウム テトラクロログリシン 20%)
この Everyday strength のものは、アルミニウム・ジルコニウム・テトラクロログリシンが入っており、ロールオンとステイックタイプのものがあります。
(そうです。一番最初に書いたように、これは日本で作られているものには塩化アルミニウム- ジルコニウム複合塩は入っていません。アメリカのFDAは通っているけれど、ヨーロッパのものには塩化アルミニウム- ジルコニウム複合塩は入っていないと思います。)
ロールオン タイプ
スティック タイプ
以下はロールオンでないもの。
AHC20センシティブ(塩化アルミニウム20%)
これはロールオンではありません。これはスイスから。アマゾンや楽天で買えます。
使い方は、コットンに数滴AHCセンシティブをつけて、そのコットンをワキに当てて液体をワキに少量つけるという形の塗布方法です。
肌のために『ハーブ』の植物エキスが入っているらしい。
レビューを見ると、『非常に満足した』と言うものは多かったのですが
肌のかゆみの副作用を書いたレビューも良く見られました。
多分、かゆみは正しい使い方(夜、完全に乾いた肌に少量つける)をすれば、最小限に抑えられるのではないかと思いますが、肌が敏感な方はアルミニウム濃度の低いものを使った方が良いかもしれませんね。

オドレミン(塩化アルミニウム13%)
アマゾンでも楽天でも購入可能です。
オドレミスト(塩化アルミニウム13%)
こちらもアマゾンと楽天から買えます。
実際の商品はスプレータイブですが、お試しで袋入り少量を購入することができます(上の写真にリンクが貼ってあります)。3つの小さいパックで送料込み300円。6回分。
またはまず一つスプレーを買って試してみるか。
(この上の写真から、アマゾンで購入するのが、今の所一番安そうです)
サラッセクリアローション (塩化アルミニウム 濃度はオンラインで検索できず)

まとめ
- アルミニウムの濃度が高いものは、制汗作用は強いが、副作用の頻度も上がるので、自分の肌の状態にあったものを選ぶ
- 正しい使い方をすることが大切(夜、乾いた肌に、制汗剤が乾くまで服を接触させない、朝シャワーか拭き取り)
